エルファイモニター概要

1はじめに

産業界では機器の正常な運用と制御のために各種変数を測定することが必要です。変数には温度、圧力、 流量、電流、電圧、回転数などがあり、pH、導電度、酸素などのガス濃度なども含めて測定は比較的容易 です。ところがトルクと電力消費量は重要な変数でありながらそれらの監視、制御は無視されて来ました。

殆どの産業機器ではある種の電気モータが使われて、必要なトルクが仕事の原動力に変換されます。 そのトルクの大きさを測定すれば、機器が正常に働いているか否かが分かり、トルクを常時測定していれば、 不安定、過負荷など、想定外の異常時に機械を制御したり停止したりできます。

回転軸に歪計を取り付ければトルクを直接測定できます。他にも色々な測定法がありますが、これ等はどれも 高価で機械的にも壊れやすく、非常に高価な機械にだけ使われています。一方、モーターの消費電力(P2)を 常時測定すれば、これがトルクと比例関係にあるので、間接的にトルクの変動がわかり、その応用機器は産業 界に恩恵をもたらしています。これらの目的で開発、製造されたIntelligent Power Control Unit (コンピュータ による電力制御装置)である ニューエルファイ モニターシリーズをここで紹介します。

2電力の測定

間接的なトルク測定のための消費電力の測定は、以下の事を考慮して下さい。


  1. 電力は P=√3×V×I×Cosφ の関係式を使って測定する事。
  2. 測定は正確に、特に再現性の正確さが重要です。
  3. 反応時間(reaction time) が短い事。最小可能な反応時間は半サイクル、50Hzで10msです。
  4. 測定は非サイン波、例えば周波数変換機の前の様に鋭い電流ピークがある場合Crest factor ?10 (波高率)でも有効な事。
  5. 測定機はスタートタイマ(start timer)、オートゼロ(automatic zeroing)、最大,最小負荷時のピーク検出 (peak detector)、電圧、Po等の補正機構を備える事。

以上の条件はニューエルファイモニターシリーズで実現します。

ニューエルファイは強力なマイクロプロセッサーを中心に構成され、上記の機能を可能にしています。迅速、 正確な測定は特別開発の4象現掛け算機 (4-quadrant multiplier)の採用で達成しました。 この測定原理は、kW級の測定確度を電圧、電流の波形と無関係にして、高いcrest factor にも対応します。

ここに述べた正確な測定以外にも ニューエルファイモニターシリーズには産業に役立つ数々の制御機能 があります。

2.1Power(電力)VS CosΦ(力率)AND Current(電流)測定

産業界で使われている消費電力の測定装置は全消費電力(kWh)を記録するものが大半で、一般に作動時間 が長く、従って機器の監視、制御には向きません。 力率または消費電流のみの測定に基づく負荷監視装置 (ロードモニター) が多く作られましたが、それらは トルクの制御には不適当です。理由は、下図に示される様に、トルクは力率 (cosφ) を計算に入れた真の消 費電力 (true power consumption) に比例するからです。

上図左の様にトルク(負荷)と電流の関係はかなり非直線的で、アイドリングから50%負荷まで殆ど変わって いません。

上図中のcosφ(力率) と負荷との関係は一見、監視・制御に有効な変数に思えますが、残念ながら 電源電圧 (mains voltage) が一定と言う厳しい条件が必要です。トルクが一定の場合、電源電圧が上がると cosφ(力率) が下がる、電圧が下がれば cosφ(力率)が上がると言う関係があり、これに頼ると間違った アラームを出す結果になります。

電源電圧の変動 は僅かながら電力とトルクの関係に影響します。 電力計はモーターの全消費電力 P1を測定します。P1はP0+P2で、P2は電源電圧の変動に無関係ですが、 P0は電圧変動 (ΔV) の二乗に比例して変わります。 この関係は時には影響大となるので、ニューエルファイモニターでは別のP0補償法で対応します。工作機械 の様に繰り返し動作する場合は、各サイクルにつきアイドリング時の消費電力P0を打ち消す (ゼロアウト)事は 非常に有利です。これは電源電圧の緩やかな変動を補償するだけでなく、ベアリングの摩擦やギアオイルの 温度による変動なども補償します。

ニューエルファイ の各機種は電源に対してバランスがとれたモーターなどの負荷 (symmetric load) を測定 する様に設計されています。従って電流の測定は三相のうちの一相で行なわれます。 SCM(コンベアモニターは最大8Aまでの内蔵電流変換機 (current converter) とプログラムできる 4レンジ (In=1,3,5,or8A)を持ち、8A以上の電流に対しては外付けのN/1 またはN/5 電流変換機を使用 します。(後述)

3標準型 エルファイモニター の特長

電力の測定とトリップポイント(trip points)設定以外にも エルファイモニターには多くの機能が内蔵されて います。それらの機能 (function) はキーボードでプログラムできるので、独立(stand alone)の監視、制御装置 として使えます。この章ではプログラミングの簡単な説明と各機能について述べます。

3.1プログラミング

一般にエルファイ製品は図2に示される僅か3個のキーでプログラムされます。 Mode キーは kW または kW[%]の表示を別のプログラム可能な変数の表示に切り替えます。赤色LEDは どの変数 (parameter) が変えられるのかを示します。 モード( mode )キーで、ある変数を選ぶと、その値がディスプレーに表示され、2個の矢印キー(アップダウン キー)で値を変更できます。変数はEEPROMに保存されるので、電源OFFでも消えません。なお、各キーを押 し続けると表示を繰り返します。

図2.表示パネルの代表例 (SCM)

3.2測定範囲

全機種は最大8Aまで測定できる電流トランス CT (current transformer)を内蔵し、1A, 3A, 5A, 8Aの4レンジ を備えます。8A以上の測定は外部CT、N/1またはN/5が必要です。N/1使用なら1Aレンジを、N/5なら5Aレン ジを選びます。 電力は測定レンジ(フルスケール)の%で表示されます。 100%に対応する電力P(kW)は次式で計算できます。

P=1.73×V×I

Vは公称電圧、I は選択した電流レンジ、外部CT使用時はその一次電流。 (例) 電流レンジ=1、公称電圧200Vなら、P=1.73×200×1=0.346kW 表示100%は0.346kWに対応し、表示が40%なら 0.4×0.346kW=0.138.4kWです。
3.3トリップポイント(Trip points )

エルファイのトリップポイント(trip points)は常に測定レンジの%でプログラムされます。 トリップポイントの選定は理論的方法と実地的方法があり、後者は3.4で述べます。 理論的には、Md=P2 ×60/2?n
Md:アラームを鳴らしたいトルク、P2:対応する軸出力、n:毎分回転数、
P1=P2+P0(またはモーターの効率曲線から得る)
トリップポイント(Trip point) [%]=100×P1/P
Pはユニットの測定レンジ。

3.4ピーク検出器(Peak detector )

機械を通常の負荷で一定時間運転したまま、矢印キーを押してkWモードにおける最大、最小値を読み ます。アップキーは最大ピーク値、ダウンキーは最小ピークです。適当な許容範囲でトリップポイント (trip points)をプログラムします。

3.5Ts スタートタイマー(Start timer, Ts )

起動電流でアラームを出さないためにモーターが 定常回転に達するまで監視動作は行なわれません。 これがスタートタイマー Tsで、設定範囲は0.1-25秒。 消費電力が5%を越すとTsが動作し、Tsが切れ るとリミット(limit),ヒステリヒス( hysteresis), リアクションタイマー(Reaction timer )などが動作 を開始します。消費電力が5%以下に落ちると 監視を停止します。


3.6Trリアクションタイマー(Reaction timer )

短時間のピークによるアラームを防止します。 リアクションタイマーを仮に1秒にセットすると、負荷電力 がトリップポイントを1秒以上越えなければアラームは 出ません。Trの設定範囲は0.01-25秒です。


3.7アラームのリセット

アラームのリセットはパネルのResetキー、又は digital input S1で行います。

3.8Reset input S1(リセット入力)

デジタル入力(digital input) S1経由で アラームは手動またはオートリセット (Auto reset)でリセットできます。 S1をグランド(Gnd)に接続すれば オートリセットと共に同時にヒステリシス (hysteresis)機能も動作します。

3.9Hysteresis(ヒステリシス)

右の図はMax又はMinのヒステリシス バンド(hysteresis band)とトリップポイント の関係を示します。ヒステリシスバンドは 常にMaxリミットの下、Minリミットの上で す。ヒステリシスバンドの幅は測定レンジ の%でプログラムできます。 Maxリミット=80%、システリシスバンド=10% では消費電力が70%以下に下がるまで リレーはONになりません。ヒステリシス 機能はトリップポイントを越え外部リセット (external reset)がONで動作します。


3.10S2 アラームブロッキング(Alarm blocking )

監視動作中に予測できる短い過負荷または軽負荷が起こる場合、その情報を機械に覚えさせてアラームを 阻止できます。これはデジタルインプット(digital input) S2で行います。S2はアラームが出る条件の時に、 アラームを阻止したい時にONにする必要があります。 Minリミット設定時に人為的にモーターを止める場合など、何もしないとMinアラームが出てしまいます。

3.11リレーの極性(Relay polarity )

逆特性のリレーを使用したい場合、本機はプログラムでリレーの極性を逆転できます。しかし自己監視機能が なくなるのでお勧めできません。できる限り逆接続不可のリレーをお使い下さい。

以上の機能の他にエルファイだけの特殊機能をもつ機種があります。

3.12dP/dt 監視

dP/dt監視は消費電力の絶対値でなく時間変化量を監視するものです。例えば負荷が変動するベルトコンベアの場合、 トリップポイントを一定に設定できませんが、dP/dt監視で解決できます。dP/dt リミットは測定レンジの%でプログラムされ ていることにご注目。これは高度な測定が高感度の監視を得る(逆も然り)ことを意味します。 例:電力が10%、dP/dt リミットが10%なら測定値はリレーが動作する20mS以内に2倍(10%+10%)に上がることが必要です。 何故ならdP/dt リミットは実際の測定値ではなく、測定レンジに関係するからです。エルファイV382はMax リミットを持ち ゆっくり増加する負荷にも勿論対応します。

dV/dt 監視

dP/dt監視中に電圧変動dV/dtを考慮しないと誤アラームが出ます。それはアイドリング電力が電圧変動の二 乗に比例することによります。電圧の上昇は電力の上昇を招き、軸出力(トルク)は変わらないのにアラームが 出ます。V382はdV/dt監視機能を持ち、電圧変動がユーザーのプログラム範囲を越えない限りdP/dtアラーム をだしません。

3.13逆転( Reversing )

スクリュウコンべアモニターSCMはエルファイモニターの中で独自の機能を持ち、PLCに接続せずに コンベアを逆転でき、うまくすれば障害物を取り除きます。逆転の時間と回数はユーザーがプログラムできま す。

モータと負荷の関係・原理

1はじめに

モータで様々な機械設備を駆動し、もの造りや環境等を維持するために色々応用されていますが、 ここではモータで負荷を駆動した時に、どのような関係があるのか、紹介して見たいと思います。

2モータ

機械装置のモータ電源スイッチを入れるとモータは回転を始めます。この時、機械装置と モーターの常態がどのようなことが起きているのか調べてみることにします。

3モータ出力

モータの出力はワット(W)又はキロワット(KW)の単位で表し次のような関係になります。

1(KW)=1000(W)

1(HP)= 746(W) HP:馬力(主にアメリカで使用)

モータの定格出力は、定格電圧、定格周波数で最も良好な特性を発揮しながら運転できる出力の値で あってモータの銘板に記載されています。定格出力は最大出力ではないことに注意して下さい。 定格出力時の回転速度、電流がそれぞれ定格回転速度、定格電流で、これらもモータ銘板に記されて います。定格出力の状態を全負荷、空転を無負荷、定格出力以上の状態を過負荷といいます。

図1. モータ外観図

4モータ入力

モータがある出力で運転している時、モータ電源端子から流入する有効電力を入力といいます。 モータ端子電圧V(v)で電流I(A)が流れているとき入力Piは次式のようになります。

三相交流の場合 Pi=√3V×I×CosΦ(w)

5モータ力率

上式から交流入力モータの場合、1/cosφ倍だけ大きい電流が流れます。このcosφを力率といいます。 交流の電圧と電流は正弦波状に変化しますが、交流モータに電圧を加えると電流が電圧の波形より遅れ ます。この遅れを電気角φで表しそのCosφを力率といいます。 このため、V×Iがの全てが有効電力にならないで、VICosφが有効な電力となります。

図3.モータ交流電圧と電流

6モータ効率

有効電力が全てモータ出力に変換されるわけではなく、一部はモータ内で変換ロスとして消費されます。

Po=ηPi(W)

が出力としてモータ軸からでます。この出力と入力の比ηを効率という。ηは必ず1より小さい値である。 モータの内部損失は(入力−出力)で鉄損、銅損、機械損などに消費され、モータの温度上昇の原因に なっています。

図3.モータ交流電圧と電流

7モータの出力、入力、電圧、電流、力率、効率の関係

Po=ηPi=η(√3VIcosφ)(W)

Po : モータ出力 (W) η : モータ効率

cosφ : 力率 Pi : モータ入力(W)

I : 電流(A) V:線間電圧(V)

8モータの負荷特性

図4. モータ負荷特性曲線

図4は、モータが無負荷から定格負荷及び過負荷に至るまでの一般的な交流モータの特性曲線です。 空運転から定格負荷まで負荷変化に比例した変化は力率、電流も比例した変化はしていない事が わかります。電流はモータ負荷が定格領域であれば電流は負荷に追従した変化をしてくれますが、 逆に負荷の軽い領域は電流変化が極めて小さいか、変化しないことが一般的です。 処が、力率の変化を見てみますと、負荷が定格領域では力率変化が極めて小さいか、変化しない ことが一般的です。有効電力又は、出力(軸出力)の負荷との関係は空運転から定格に至るまで 比例した関係にあることがわかります。 これらからモータの負荷は軸出力、有効電力、又はモータ電圧が一定でほとんど変化しない条件ならば 有効電流 (ICosφ)でも充分に変化に比例した特性を持っています が実際の工場の環境では無理で しょう 。

9モータ電流

電流は負荷変動に追従した特性が得られないと説明しましたが、ここで下記のような関係で減速幾を介し モータが機械装置を駆動した時に、

有効電力(入力)→ モータ(出力)→ 減速器 → 機械装置

減速された分だけモータは小さな出力で対応できるようになり、モータの負荷は微小変化か空運転の状態で 回り続けます。負荷電流は変化しにくくなります。このような時でも、有効電力又は、軸出力で変化を捕らえる ことが可能です。しかし減速比率の大きな減速器の場合は、モータが空運転状態でモータの力率も電流も 変化が見られなくなり、有効電力、軸出力でも負荷変動を捕らえられなくなります。 モーターは常に一定の回転を保つようになっている為、モーター回転変化からも負荷変動を捕らえることは 困難なのです。

図5.入力電圧と負荷電流

上図で、モータ負荷電流はモータ電圧と密接な関係があります。定格電圧100%時に対して±10%電圧が 変化した時(一般的に製造現場でよくあること)に、モータ電圧が下がった分だけ負荷電流は増加し、 モータ出力を一定にします。反対にモータ電圧が上がった分だけ負荷電流は減少し、モータ出力を一定 にします。ここでもし、負荷電流で設備機械装置の過負荷や軽負荷を保護警報に使用した場合、モータ電圧 が変化した時に、負荷異常で無いにもかかわらず警報が出てしまい、結果は誤警報でありモータ負荷(電流) で機械装置の警報は捕らえにくいと言われ続けてきました。ただし、モータ自体を過負荷から保護したい時、 モータ定格運転領域では充分電流変化もあり、何らかの電流警報装置を設置する事をお薦めします。

10モータはセンサー

産業機械装置は、ほとんど交流モータを使用して駆動しています。駆動エネルギー源として1番利用 しやすいし、コストも安くつき利用され続けています。しかし、設備の負荷変動をモータから捕らえようとした 時に、電流監視が一般的でした。これは、モーターの参考書を探しても、 設備機械とモーター負荷がどのようなプロセスで駆動されているのか、見落とされ続けてきました。 設備と駆動源であるモータの関係(原理)を考えた時、モータのエネルギー入力(この場合は有効電力) がなければ設備機械は駆動できないのです。モータ負荷電流は、ひとつの特性曲線にすぎず、 モーターを駆動するエネルギーになるのは、

有効電力=電圧×電流×力率

の関係になります。電圧、電流、力率全て捕らえることにより、モーターの負荷異常を監視することができるよ うになります。しかし、モーター回転数を下げるために高減速比で装置を駆動するとき、モーターは減速され た分、巨大化し空運転状態を形成します。このようなときは、減速された分モーターを小さくすればモータ は適正な負荷(モータ定格領域)で駆動するはずです。ここに提案申しあげます。 設備の無駄な電力消費も無くなり環境保全対策としても良い効果が期待されると思います。